【人事部長の教養100冊】
「チーズはどこへ消えた?」
S・ジョンソン

チーズはどこへ消えた?_

「チーズはどこへ消えた?」
S・ジョンソン

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基本情報

初版   1998年(米)、2000年(日)
出版社  扶桑社
難易度  ★☆☆☆☆
オススメ度★★★★☆
ページ数 152ページ ※図解強化版
所要時間 2時間00分

どんな本?

自分の望むものを手に入れるためには、環境の変化に対応しなければならないと説く実利的な短編寓話。人や組織が環境の変化に直面したときの「あるある」を豊富に提示し、採るべき行動を示唆する。

世界で2800万部、日本で400万部を売り上げた大ベストセラー。多くの大企業で研修に取り入れられているほか、エンゼルスの大谷翔平が愛読書として本書を挙げたため、再び注目されている。

著者が伝えたいこと

世の中は常に変化している。その変化に出来るだけ早く気付き、リスクを取って行動を起こさなければ、自分の望むものは手に入らない。さあ、変化を楽しもう。自分を変えよう。

著者

スペンサー・ジョンソン
Spencer Johnson
1938年-2017年

アメリカの作家・医学博士・心理学者。南カリフォルニア大学で心理学士を、アイルランド王立外科医学院で医学博士を取得。

医療関係者として心臓ペースメーカーの開発等に携わる一方、『1分間マネジャー』など多数のビジネス書を発表し、企業やシンクタンクでビジネスパーソンの指導にあたった。ハーバード大学のビジネススクールでフェローを、ケネディスクールでアドバイザーを務めていた。

こんな人にオススメ

自分の望むものが明確な人、成功=幸福と信じる人、人や組織が環境の変化に直面した時の「あるある」を知りたい人

書評

「変化に対応せよ」というシンプルなメッセージを持つ自己啓発本。本サイトのコンセプトである「骨太の教養本」からはやや距離があるが、自己啓発本としての影響力の大きさを考慮して掲載した。

本書はあくまで「自分の望むものを手に入れるためにはどうすれば良いか」を説いた実利的な本であって、「望むものを手に入れれば幸せになれるのだろうか」「チーズを追い続ける人生に意味などあるのだろうか」といった哲学的な問いを持つ人には向かない。

「チーズ」を「与えられた現状」と置き換えれば、広く汎用的に使える教訓になるので、常にマーケットの変化に対応し、利益を出し続けなければならない一般企業の偉い人が手軽に訓示で使いそうな本と言える。

要約・あらすじ

登場するネズミと小人

■ネズミ2匹と小人2人は常にチーズを求めていたが、ある日、ステーションCにはチーズがたくさん存在し、常に誰かが補充することを発見した。ネズミは知恵が足りないので毎日”C”に駆け込んでは変化がないか確認する。一方、小人二人はすっかり慢心して「チーズは我々のもの」と思うようになった。

■ある日、突然チーズがなくなった。ネズミ達は事態を分析したりせず、環境の変化に気付いてすぐさま他のチーズを探しに行ったが、小人二人は嘆き、他の誰かを責め、原因を探ることを優先し、現実を受け入れることを拒否した。

■そうしているうちに、ネズミ2匹は試行錯誤で迷路を奥に進み、新しいステーションで大量のチーズを発見する。小人二人は相変わらず、近くにまだチーズがあるはずと信じて穴を掘ってみたり、しばらく様子を見たりしていた。

■しかしホーは迷路に出てみることにした。最初は恐怖心に駆られていたが、新しいチーズを手にした自分を想像すると、だんだん冒険が楽しくなってきた。もっと早く古いチーズに見切りを付けていれば、それだけ早く新しいチーズを見つけられたはずだと後悔するようにもなった。

■そしてホーは別の場所で大量のチーズを発見する。ここまでの教訓をまとめてみると、次のようになった。

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学びのポイント

①変化に気付く

ある朝、行ってみると、チーズがなくなっていた。(ネズミの)二匹は驚かなかった。置いてあるチーズが毎日、だんだん少なくなっているのに気づいていたので、いずれなくなるだろうと覚悟していたし、どうすればいいかは本能でわかっていたのだ。(中略)

同じ日、ヘムとホーはのんびりと”C”にやってきた。二人は、毎日小さな変化が起きていることに注意を払わなかったから、いつもどおりチーズがあるものと思っていた。二人には青天の霹靂だった。

本書の示すメッセージは単純明快で「①変化に気付く」「②変化に対応してリスクを取る」「③変化を楽しむ」「④自分を変える」の4つである。

まずは「変化に気付く」こと。ネズミ2匹は知恵は足りないが、毎日少しずつチーズが減っていくというありのままの現実をしっかり観察していた。一方の小人は「環境は変化しないもの」と慢心し、小さな変化に気が付かなかった。

この小人の態度は「茹でカエル理論」で説明されることが多い。

ゆでガエル
ゆでガエル理論

「茹でカエル理論」とは、「カエルは、最初から熱湯に入れると驚いて逃げ出すが、水から徐々に水温を上げると逃げ出すタイミングを逸し、最後には茹で上がってしまう」というたとえ話のこと。

ゆっくりとした変化には気が付きにくく、また、たとえ気付いたとしても放っておかれることが多いため、変化が明確化した頃には既に手遅れになってしまうという教訓を含んでいる。

※ちなみに、カエルを熱湯に入れると直ぐに死んでしまうし、水から徐々に水温をあげていくと、しっかり逃げ出すそうです。あくまで、たとえ話として理解しましょう。

②変化に対応してリスクを取る

もう一度迷路を走りまわるのは気が進まなかった。きっと道に迷ってしまうだろうし、どこにチーズがあるか皆目見当がつかなかったから。(中略)

ホーは、もっと早く変化に対応し、もっと前に”C”を出ていれば、今頃はいろんなことがもっと好転していただろうと思った。精神的にも肉体的にも、もっと強健で、新しいチーズを探すという難題にもうまく対処していただろう。

実際、変化を予期していれば、いまごろは新しいチーズをみつけていただろう。なのに、変化が起きたことを認めようとしないまま時間を浪費していたのだ。

たとえ変化に気付いたとしても、それを認めずに時間を浪費してしまうことが多い。「変化はまだ小さいと思ってしまう」「別の場所にチーズがあるか分からない」「新しいことを考えるのが面倒」「変化に対応してもうまくいくか分からない」などなど、いわゆる「やらない理由」はいくらでも思いつく。

これらの根底にある要因は、経営学の分野で用いられる「スイッチングコスト」と、スイッチした先がまともかどうか分からないというリスクで説明できる。

スイッチングコストとは

現在利用している製品・サービスから別の会社の製品・サービスに切り替える際に負担しなければならない金銭的・物理的・心理的なコスト。

例えば、現在使用しているソフトウェアを買い替える場合に発生する以下のようなコストのこと。

・金銭的コスト=買い替えの費用
・物理的コスト=操作の違いに慣れるための時間と労力
・心理的コスト=新しいソフトの使い方を学び直すハードル

なお、スイッチ先のソフトウェアがダメ製品だった場合には、さらに次の製品に買い替えなければならず、その分スイッチングコストは増大することになる。

グロービス経営大学院HPより一部改変・追記
https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-11837.html

仮に環境の変化(上記例の場合は既存ソフトウェアの陳腐化)が起きているのであれば、スイッチングコストを許容し、リスクを取って、「新しいチーズ」を探しに行かなければならない。さもないと、環境変化に取り残されることになる。

③変化を楽しむ

ホーは恐怖に捕らわれていたのを悟った。新しい方向に踏み出したことで、解放されたのだ。 そこには爽やかな風が吹いていて、爽快な気分になった。何度か深呼吸をすると、元気が出てきた。恐怖がなくなると、想像以上に楽しくなるのがわかる。(中略)

人が恐れている事態は、実際は想像するほど悪くはないのだ。自分の心の中につくりあげている恐怖のほうが、現実よりずっとひどいのだ。

彼自身、新しいチーズがみつからないのではないかという恐怖から、探しに出かけようという気にすらなれなかった。しかし、出かけてみると、先に進むのに必要なチーズはみつけることができた。いまは、もっとみつかると予測しているし、先のことを考えるだけで、胸が躍る。

これは社会人経験の長い方であれば、経験されたことがあるのではないだろうか。仕事上で厄介なことが起こった時に、受動的に対応するより、能動的に対応する方が、目の前の課題解決に集中できる。逆から言えば、余計な心配をしたりイラついたりすることが少ない。

江戸初期の剣術家、宮本武蔵はこのような言葉を残している(※読み人知らずという説もあり)

宮本武蔵
巌流島の宮本武蔵像(右)

切り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ 踏みこみ見れば後は極楽

※注)刀同士が打ち合う場面は地獄だが、そこで一歩前に出れば楽に相手に勝てる。その一歩踏み込むことが大切だ、という意味。

まさに「恐怖がなくなると、想像以上に楽しくなる」ということを言っている。

また、勝海舟は宮本武蔵の言葉を引用して、リスクマネジメントの要諦を簡潔に述べている。

勝海舟
勝海舟

昔の剣客の言葉に「切り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ 踏み込み行けば後は極楽」というものがある。

人間には余裕が必要だ。小さいことを心配し、怖気づいてしまっては、大きな仕事はできない。目の前の困難を大きく見過ぎなのだ。

本来であれば、その困難を飲み込むくらいでなければいけないが、多くの人は困難に飲み込まれてしまっている。

洋の東西は違えど、宮本武蔵も勝海舟も本書も、言わんとしていることは皆同じと言える。

④自分を変える

人は変化に対応することができるようになるのだ。それは――

・物事を簡潔に捉え、柔軟な態度で、すばやく動くこと。

・問題を複雑にしすぎないこと。恐ろしいことばかり考えて我を失ってはいけない。

・小さな変化に気づくこと。そうすれば、やがて訪れる大きな変化にうまく備えることができる。

・変化に早く適応すること。遅れれば、適応できなくなるかもしれない。

・最大の障害は自分自身の中にある。自分が変わらなければ好転しない

――そう思い知らされた。恐らく最も大事なことは、つねに新しいチーズがどこかにあるということだ。その時点ではそう思えなくても。そして、恐怖を乗り越え、冒険を楽しむなら、報いはあるということだ。

これまで述べてきたことが簡潔にまとめられている。結局「変化に気付く」のも、「リスクを取って対応する」のも、「変化を楽しむ」のも自分自身であるが、それが最大の障壁なので、まずは自分のマインドセットを変えなければならないと説いている。

本書では、変化に直面した際に人々が典型的に示す反応例について実に多く言及している。また、勇気をもって変化に対応した人が感じるであろうことも整理されているので、ぜひ参考にしたい。

【変化が起きた場合の人々の反応】
・嘆く
・誰かのせいにする
・ののしり合う
・原因を探求する
・他の人の行動を気にする
・小手先の対策で乗り切ろうとする
・思考を止めて経過観察する
・不安で自宅でもくつろげなくなる

【変化に対応した人の反応】
・勇気をもって行動し始めると、案外大変ではないことが分かる
・他の人に出来るなら自分にも出来るだろうと前向きになる
・変化に鈍感だった自分を反省する

人事部長のつぶやき

目標をイメージする

事態が一層よくなるように、ホーはもう一度、心の中でイメージした。チェダーからブリーまで(!)、自分の好きなあらゆるチーズの山に囲まれた自分の姿を、細かいところまで思い描いたのだ。好きなチーズをあれこれ食べているところも想像して、楽しんだ。こんなふうに多くのものを味わえたらどんなに愉快だろう。(中略)

まだ新しいチーズが見つかっていなくても、そのチーズを楽しんでいる自分を想像すればそれが実現する。

これはいわゆる「イメージトレーニング」で、人間の脳は理想と現実を見分けるのが苦手であるという性質を利用し、理想の自分を思い浮かべて成功体験をくり返し脳に記憶させることによって、理想の自分に近づくというものですね。

事実、頭の中である運動をイメージしただけで、その動作に関係している筋肉群が反応したり、口に出さずに言葉を思い浮かべただけで、しゃべる運動を司る脳部位が活動したりすることが、科学的に立証されています。

また、ゴールをイメージすることによって「そこに到達するには今〇〇をやらねばならない」「もし〇〇になったら〇〇する」といった具体的な計画が立てられるようになることも、このイメージトレーニングの効用と言えます。

古今東西、様々な人がこの「イメトレ」を取り入れていますが、ビジネスの世界では京セラの創業者である稲盛和夫さんが有名ではないでしょうか。著書『生き方』で、こんなことを仰っていますので紹介します。

稲盛和夫
稲盛和夫

・物事成就の母体は強烈な願望である。

・思い、考え、練っていくことをしつようにくり返していると、成功への道筋があたかも一度通った道であるかのように「見えて」きます。

・しかも、それが白黒で見えるうちはまだ不十分で、より現実に近くカラーで見えてくる――そんな状態がリアルに起こってくるものなのです。

・逆にいえば、そういう完成形がくっきりと見えるようになるまで、事前に物事を強く思い、深く考え、真剣に取り組まなくては、創造的な仕事や人生での成功はおぼつかないということです。

稲盛和夫『生き方』第1章より抜粋

稲盛さんの言いぶりでは単なる精神論のようにも聞こえますが、脳科学的にも正しいことが示されています

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