【人事部長の教養100冊】
「アメリカの鏡・日本」
H・ミアーズ

人事部長の教養100冊ロゴ
アメリカの鏡日本(表紙)

「アメリカの鏡・日本」
ヘレン・ミアーズ

スポンサーリンク

基本情報

初版   1948年(米)、1995年(日本)
出版社  角川学芸出版
難易度  ★★★☆☆
オススメ度★★★★★
ページ数 461ページ
所要時間 5時間00分

どんな本?

アメリカ人の目から見た満州事変~第二次世界大戦(太平洋戦争)の戦略的意義を生々しく語る。

「戦後、米英はソ連の脅威を語るが、ソ連を抑止するための緩衝国家たる満州国を認めず、結果として日本という優秀な同盟国を失ったのは愚策だった」など、日本の歴史教育では決して出会わないアメリカの戦略眼が次々展開される。目から鱗が落ちる、非常に学びの多い一冊。

著者が伝えたいこと

戦勝国は日本を「好戦的で残虐」と裁いたが、その日本が手本としたのは欧米列強である。日本は、欧米列強が世界に進出し、侵略し、収奪した歴史を映す鏡そのものである。

著者

ヘレン・ミアーズ
Helen Mears
1900-1989

ヘレン・ミアーズ
ヘレン・ミアーズ

1920年代から日米が開戦する前まで二度にわたって中国と日本を訪れ、東洋学を研究。戦争中はミシガン大学、ノースウェスタン大学などで日本社会について講義していた。

1946年のGHQの諮問機関「労働政策11人委員会」のメンバーとして来日し、戦後日本の労働基本法の策定に携わった。

こんな人におすすめ

1853年のペリー来航から1945年の敗戦までの日本を、アメリカの視点から客観的に理解したい人。同時期の国際政治の動きを巨視的に把握したい人。

ヘレン・ミアーズ
(角川ソフィア文庫)

※日本史では決して学べないアメリカの戦略眼。学びの多い一冊

要約・あらすじ

■アメリカ軍による日本占領は、一般の戦争における賠償を遥かに超える「懲罰と拘束」だった。目的は日本を二度と戦争を起こせない国家体制に「改革」することであった。

■大東亜戦争開戦時、国力は圧倒的にアメリカ優位であった。日本は決して「世界征服」できる体力はなかった。大規模な軍事作戦すら不要で、海上封鎖さえすれば、いずれ日本が息詰まることは明白だった。アメリカは日本を過大評価していた。

■アメリカは日本を占領するために日本の降伏を急いだ。ソ連に先んじて日本に入るために原爆を使用した。決して日本に戦争で勝利するためではない。

■アメリカは日本人を「好戦的」「天皇を中心に世界征服を企む」と宣伝してきたが、近代以前の日本が好戦的であった事実はない。近代以前の日本は、少なくとも1800年の間、様式化され限定化された内戦の時代と、全体的混乱の一時期を除けば、平和と安定の中で文明を発展させ、人口を増やし、制度を整備し続けてきた。

■一方、近代日本が仲間入りした当時の国際社会では、政治・経済を中央で集中管理し、周囲に対して狂暴かつ貪欲でなければ生き残れなかった。日本人に中央集権化と、暴力と貪欲を組織化する術を教えたのは欧米列強であった。

■アメリカが日本を理解するのは困難である。それぞれの国が追求したり大切にしたものは、一例を挙げるだけでもこれだけ異なるのだ。

アメリカ:大きいもの(農地、ダム)、物質的な快適さ、自然は征服して活用する対象、国土の開発・領土の拡張

日本:小さいもの(盆栽、潜水艦)、美的センス、自然は感謝する対象、自己規律と様式化された文明を完成させること

■日本の指導者たちは欧米列強から「国際政治とはパワーポリティクス(=力こそ正義)である」と学び、アジアの地で欧米列強と全く同じ振る舞いをした。アメリカがモンロー宣言でヨーロッパによるアメリカ大陸への干渉を拒否したように、日本は欧米列強によるアジアへの干渉を拒否しただけだ。

■日本の朝鮮半島・満州・中国本土における振る舞いを「野蛮で侵略的」と評するのであれば、欧米列強がアジアでやってきたことも同様に「野蛮で侵略的」なのである。アメリカに日本を裁く権利はない。

■戦後の英米が直面しているのはソ連の脅威である。そもそも英米はロシアの進出を抑えるために、日本を育成して利用した。その日本は自律的に「共産主義の脅威に対抗するため」に満州を緩衝国家にしようとしたが、英米はそれを認めなかった。結果として戦争に突入し、英米は極東における対ソ連の潜在的同盟国を失った。大きな目で見れば、英米の政策担当者は無能と言わざるを得ない。

■ロシアを抑えるために日本を利用し、その日本が信頼できないとなれば、今度はその役割を中国に担わせようとしている。しかし歴史は繰り返す。条件さえ与えられれば、すべての人間は好戦的になる。英米はかつてそういう条件を日本人に与えた。そして今度はそれを中国人に与えようとしているのだ。

学びのポイント

日本人には精神鑑定以上の何かが必要

開戦当時のアメリカと日本の国力の差は圧倒的だった。1931年の満州事変から敗戦に至る14年間の日本の総軍事予算は480億ドル、一方のアメリカは3,300億ドルである。

また、日本は主要物資をアメリカ、イギリス、オランダ等からの輸入に頼っていた。シンガポール、マレー、フィリピン等の占領による略奪品で一時的に供給環境が改善したが、海上輸送手段と産業施設が不十分であったために、占領地域で原料を増産することができなかった。

日本との戦争は、大規模な軍事力行使をしなくとも、単純な海上封鎖で十分に勝てたのである。アメリカと日本の生産能力を比較するにつけ、なぜ私たちが日本を恐れてきたか、分からなくなるのだ。アメリカは精神鑑定が必要かもしれない。

これは日本に対する痛烈な皮肉である。アメリカは簡単に勝てる相手をなぜ恐れたのか、日本は絶対に勝てない戦争をなぜ始めたのか。

日本政府は、アメリカと日本の国力の差を冷静に分析し、認識し、戦争をしても必ず負けるということを理解していた(猪瀬直樹著「昭和16年夏の敗戦」に詳しい)。

しかしながら、日本は全く非合理な開戦という判断に傾いてしまった。理由は無数にあれど、よく言われるのは以下のようなものだ。

・日清、日露戦争の成功体験が日本人を付け上がらせ、理性に基づく冷静な判断力を失わせていた


・満州で失った兵力を「英霊」としてしまい、サンクコストを無視して満州を死守しようとした


・明治憲法下においては、天皇陛下に軍隊の統帥権があり、内閣に指揮権がなく、軍部の独走を許してしまった

これがわずか80年前である。私たち日本人は、これほどまでに愚かな判断をしてしまう民族性を持っているということを、謙虚に受け入れなければいけない。

会社に勤めていると、なんとも日本人は組織の運営がヘタで非合理であるという場面に多く出くわす。意思決定会議では、事前に主要メンバーに根回しをするのが通例で、会議自体が儀礼化していることなどはその典型だ。情報も決してオープンではない。

「自由な議論とフェアな情報共有」という点では、現在でも日本の組織は圧倒的にアメリカに劣っているように思える。

アメリカから見た原爆投下

なぜ、アメリカはポツダム宣言(日本への降伏要求の最終宣言)後、たった11日しか待たずに日本に原爆を投下するようなことをしたのだろうか。もう少し待てなかったのか。

この疑問に対する答えはソ連との関係である。アメリカは、日本の降伏後、ソ連が日本に侵入してくると見ていた。よって、ソ連が来る前に日本を占領する必要があると考えていた。

日本はすでに敗北していた。原爆を使う必要はない。あくまで対ソ連において、日本という戦略的に重要な島を押さえるための手段だったのだ。

これが原爆投下に対するアメリカ側の見方(の一つ)である。当初、日本はアメリカとの仲介役としてソ連に期待していた。全く国際情勢を読めていなかった。

後の祭りではあるが、仮に開戦を致し方ないものとするなら、日本は敗戦が確実になった1943年とか44年に降伏しておくべきだった。明らかな負け戦を何なぜ続けたのか、これは日本人の精神論と軍部の独走としか理由づけられない。

降伏が早ければ、北方領土問題も竹島問題もなかったかもしれない。憲法9条で揉めることもなかったかもしれない(もっとも、戦後の高度経済成長等も、なかったかもしれない)。

どっちもどっち

「日本人は近代以前から武士階級と天皇を崇拝してきた。神道は日本人を優れた民族と信じさせ、神である天皇を世界に君臨させるため、日本人に世界征服を命じている」とアメリカ人は教えられてきた。天皇制と神道は本来、戦争を内包すると考えた。

しかしアメリカとて、民主主義とキリスト教の名のもとに戦ったのである。しかも、民主主義とキリスト教は平和であると私たちは主張する。

大東亜戦争を始めた日本も愚かであるが、アメリカはアメリカで振りかざす論理自体は愚かである。

ヒトラーを生んだのは何だったか。ワイマール憲法は当時最も民主的な憲法の一つと言われていたのではなかったか。十字軍や三十年戦争はいったい何だったのか。本サイトでよく触れることだが、キリスト教布教を大義名分に、スペインやポルトガルが南米大陸で行った略奪や虐殺をどう説明するのか。

「民主主義とキリスト教は平和を内包する」というのは臍で茶を沸かすほど笑止千万な議論である。しかし、戦争は勝った者が正義。勝てば官軍で、日本の天皇制や国家神道はアメリカの意のままに「改革」されていくことになる。

これくらい冷静に自国の力を認識しなければ

日本はイギリスにとってよい同盟相手だった。ロシアを抑えるという役割を期待する一方、当時の日本は投入できる資本をほとんど持っていなかったから、中国における経済競争の相手になるとは考えられなかったからである。

また、日本は近代工業国・軍事大国に必要な天然資源をほとんど持たない島国だから、経済封鎖に脆い。資源的に脆弱な日本は、イギリスの操り人形であったし、国際社会においては国家というより、チェスの駒であった。

この見方は、日本人としては悔しい。悔しいが、事実である。日清・日露の両戦争に勝利できたのは、大きくイギリスに依存している。その事実を忘れ、一等国に仲間入りしたとはしゃぎ、日本は滅亡の坂道を下っていくことになる。

時代が変わっても、地政学的位置付けは、変わらない。今の日本も、欧米との経済的依存関係は強まったとはいえ、資源の大半を輸入に頼っている状況には変わらず、軍事的にも最低限の防衛力しか持っていない。

私たち日本人は、その事実を謙虚に受け入れたうえで、国際社会における立ち居振る舞いや安全保障について考えていかなければならない。日本という国は、アメリカや中国と異なり、最悪の場合に孤立主義を取って内需だけで生きていくことはできないのである。このことを冷静に認識する必要がある。

日本が国際社会の中で安全保障を維持するには、現時点ではアメリカに頼るしかない。しかしそのアメリカも「アメリカファースト」で、「自由と民主主義を守る警察」としての仮面を捨てようとしている。

その状況なのであれば、日本は自力で自国の存立と経済を守るのに必要な最低限度の軍備を整えるべきなのではないか。戦後75年、日本は舵を切らなければいけない。このタイミングで憲法改正の議論を本格化させるのは、当然のことである(と思う)。

国際社会のロジックは単純

(満州国の建国)
1931年、日本の関東軍が柳条湖の鉄道を爆破し、これを中国の仕業として奉天・長春など南満州の主要都市を占領した。中国はこれを国際連盟に訴え、1932年にリットン調査団が調査するも、調査中に(日本の傀儡政権である)満州国が独立を宣言する。


1933年にはリットン調査団報告をもとに、国際連盟が「満州に対する中国の主権を確認し、満州における自治政府の樹立と日本軍の撤退を勧告」した決議を行う。

結果として、日本が従来満州で持っていた特殊権益はそのまま認められたが、満州国は承認されなかった。

満州事変
満州事変

【日本の見解(と筆者が考えていること)】

・南満州鉄道は日本が合法的に獲得した権益であり、それを守るのは当然である。それはアヘン戦争以来、全ての欧米列強が中国に駐屯し、彼らの財産と在留市民を守ったのと変わらない。

・しかも最近、中国人は国権回復を目指し、日本の権益を損なうような行動が見られる。柳条湖事件への対応は法と秩序を回復するための警察行為であって、欧米諸国から大国の責任であると教えられたことを忠実に実行しているに過ぎない。

・満州国は、ロシア共産勢力からの防波堤としても、欧米列強から理解されるはずだ。

・日本はパリ講和会議で五大国の一員に列せられた。大国が後進地域で権益を守ることは法的に許されるはずだ。日本はもう大人なのだ。

・欧米列強が中国でやっていることが、なぜ日本には認められないのか。これは明らかな人種差別である。

・欧米列強は貿易面でも「日本は不当に安い賃金で労働者を働かせている」と言いがかりをつけ、自由経済を標榜しながら、公然と不平等関税を掛けてくる。「門戸開放」とは、欧米列強が利益を守るための擬制にすぎない。

【欧米列強の見解(と筆者が考えていること)】

・欧米列強が中国で持つ既得権が侵されなければOK。

・日本は中露の防波堤として使えるので、日本の既存の特殊権益も尊重する。

・ただ、今後、欧米諸国も満州に何らかの権益を持つ可能性があるので、日本だけ有利になる満州国の建国は認められない。

まず注目すべきは、欧米列強のロジックの単純さである。ここには「正しいこと」とか「美しいこと」などという倫理的・人道的要素は一切なく、ただただ、各国の利害のみが判断要素となっている。中国のことなど、一切考えられていない。

そして、日本人としては残念だが、大人になったと思っていた日本人は、全く大人になれていなかった。柳条湖事件を起こした関東軍は、若槻内閣の「不拡大方針」を無視して満州各地を占領し、欧米列強の疑念を招くことになる。そして蒙昧な世論もこれに賛同することになる。大国として当然の「ガバナンス」が全く利いていなかったのである。

世界恐慌を受けて各国が経済ブロックを確立する中、日本が「朝鮮半島・台湾・満州」という経済ブロックを作って経済の安全保障を確立しようとしたことは正しかったが、やり方が急進的過ぎた。冷静に国際情勢を分析すれば、国際連盟とアメリカが経済制裁措置に踏み切った場合、日本は満州から撤退せざるを得ないのだから。

日本が道を踏み外し始めたきっかけは、関東軍による柳条湖事件と、その後の暴走に求めざるを得ない。

英米目線で見た太平洋戦争

戦後になって私たちが言っているように、ソ連が「世界の脅威」であるとすれば、ソ連を抑止し、「混乱した」地域に秩序をもたらし、中国における「共産主義の脅威」と戦う行動拠点を確保するために、満州を緩衝国家にしようとした日本を支援しなかった米英は、犯罪的に無能だったことになる。

そして中国における英米の権益とともに、極東の(潜在的対ソ連)同盟国を失ってしまった。これは犯罪をはるかに超えた失策であった。

日本で通常の歴史教育を受けているだけでは、このような視点には出会えない(少なくとも私にとっては目からウロコの巨視的認識だった)。

英米の失敗は、ロシア(ソ連)や共産党に対する過小評価だった。英米視点で見れば、ソ連共産党を抑えるために日本を活用すればよかったのである。

しかし、その日本は(有色人種だったという差別感もあろうが)信頼できるパートナーではなかった。事実、日本政府は関東軍をコントロールできておらず、英米に不信感を抱かせてしまった。

日本が「共産党の脅威に対応」するためというロジックで満州・中国政策を進めようとしたところまでは正しかった。しかし英米によるソ連への過小評価と、日本の自信過剰で歯車が狂った。第二次世界大戦のアジア地区における経緯を総括するなら、こんな感じになるのではないか。

現代の対中国戦略のあり方とは

英米はロシアの脅威を抑えるために日本を活用した。しかしその日本が同盟国として信用できないとなると、今度は中国にその役割を担わせようとしている。

条件さえ与えられれば、すべての人間は好戦的になる。英米はかつてそういう条件を日本人に与えた。そして今度はそれを中国人に与えようとしているのだ。


歴史を後から振り返れば、1991年にソ連が崩壊し、西側諸国は冷戦に勝利する。中国は国家社会主義のもと、近代化のスピードは日本より遅く、1991年の時点のGDPは現在の37分の1しかなかった。

その後、中国は独自の「国家社会主義」と「疑似資本主義」のもと、世界第2位の経済規模を持つようになる。そして今や、一帯一路政策でランドパワーとシーパワーの双方を手中に収めようと野心を隠さない。

その中国に対して、ヨーロッパとアメリカの態度はどうか。

もはやアジアに特別な権益がなく、市場が広がるならそれは良いことだと考えるヨーロッパは、一帯一路にせよ、AIIB(中国が主導するアジアインフラ投資銀行)にせよ、好意的かつ協力的な国が多い。

アメリカはアジア・太平洋地域に直接の利害を持つが、中国が一帯一路でいくら勢力圏を広げようが、太平洋のどこかでそれが止まるのであれば、アメリカ本土が脅かされる可能性は低い。

となると、中国の勢力拡大に直接的利害を持つ国は、日本・韓国・台湾・東南アジア諸国・インド・オーストラリアあたりということになる。現在の韓国は完全に反日・離米・親北中であり頼りにならない。東南アジアは多様で中国に取り込まれている国も多い。となると、日本が最も重要視するべきパートナーは(アメリカは当然だが)台湾・インド・オーストラリアの3国ではないだろうか。

アメリカも加えたこの4国は、大陸国家(中国・ロシア)vs海洋国家(米・台・印・豪)という構図に重なる。また、大陸国家=共産・社会主義国家海洋国家=民主主義国家という構図ともきっちり重なる。

海洋国家vs大陸国家

日本の基本戦略としては、中国を海洋国家(シーパワー)にしないために、アメリカや台湾などと協調していく他、ないのであろう。まず太平洋を中国の海にしない、そしてインド洋も中国の海にしない、ということだ。

人事部長のつぶやき

効率化では戦争もビジネスも勝てない

大東亜戦争中、日本は「贅沢は敵だ」「欲しがりません、勝つまでは」と徹底的な倹約主義を貫いた。産業は規制され、証券市場も、政府が株式を無制限に買い取るなど機能しない状況となっていた。

一方のアメリカは物資で溢れていた。前線で戦う兵士にすら、コカ・コーラが配給されていた。生産活動も活発で、証券市場も普段通りだった。

日本の軍部は米国の自動車メーカーの株価を分析し、いつノルマンディ上陸作戦が実施されるのかの見当を付けたという(GMは米軍に輸送手段を納入していた)。これは絶望的である。アメリカは作戦の時期が推測できることを知りつつ、自由経済を守っていたのである。

そもそも、国民生活を切り詰めなければならないような余裕のない状況では、戦争には勝てない。アメリカは通常の経済活動の一部を戦争に振り向ければ十分だったため、倹約も規制も不要だった。いや、仮に追い詰められたとしても、アメリカ人はその信念から、自由で豊かな生活や、自由経済を手放さなかっただろう。

ビジネスも同じである。とにかく日本人は徹底的に切り詰めて効率化したがる。「余裕」を「ムダ」と見る国民性があるのだろうか。。。トヨタはその典型的な成功例であり、効率化という欧米人の苦手な分野で勝利(差別化)して、世界市場の一角に食い込んでいる。

しかしながら、元来「効率化」とは、「創造」とか「信念」の次に来るものであって、あくまで手段である。しかし、○○円のコスト削減!とか、人員を○割減らした!など、効率化は定量化できるので、「才」に長ける人は単純にこれを追いたがる。日本人にはこの手のタイプが多いのであろうか。

少なくとも私の勤める会社では「才」型人間が多く、大局を忘れて目先のコスト削減に勤しむ姿が多く見られます!

白人の欺瞞には冷静に対峙すべき

アメリカは満州事変や大東亜共栄圏構想を非難してきた。しかし日本は自分達の行動を、アメリカによるテキサスとパナマ運河地域の領有、モンロー主義、汎アメリカ連合と同じ言葉で説明した。

アメリカは「白人の帝国主義的支配から有色植民地住民を解放する」という日本人の「神聖なる使命」を偽善と決めつけた。

しかし、西洋文明をアジア、太平洋、アフリカの原住民に及ぼすのが「白人の責務」ならば、日本の行動理念はそれに対する論理的かつ当然の答えであると日本人は主張していた。

日本は戦争に負けたため、そのすべてを否定されてしまったが、上記のような日本の主張は、戦争の勝敗には無関係に、普遍的に正しい。

例えばモンロー主義では「南北アメリカは将来ヨーロッパ諸国に植民地化されず、主権国家としてヨーロッパの干渉を受けるべきでない」旨を宣言した。これを太平洋地域にそのまま当てはめれば、「太平洋地域は将来欧米諸国に植民地化されず、それぞれが主権国家として欧米諸国の干渉を受けるべきではない」となる。一体、どこがおかしいのか。

国際政治とは恐ろしく、まさに力の勝負である。国力と影響力の強い国の主張が通る世界なのである。

「憲法9条があれば戦争は起きない」とお花畑の主張を繰り返す人々には是非とも学んでいただきたい歴史です!

欧米から見た日本の近代化

19世紀末の欧米列強との不平等条約により、日本はいわば半植民地だった。欧米列強は貿易を管理し、金を吸い取り、治外法権に守られて居住した。

日清戦争の後、欧米はこの生徒の卒業を認定し、1899年に不平等条約の最後の条項が書き改められた。列強は特権を返上し、日本は高校卒業証書を戴いて大人の仲間入りをした。

そして日露戦争で、日本は大学卒業論文を見事に書き終える。1919年、第一次世界大戦後の講和条約を協議するパリ会議は、日本がインターンを無事終えたことを認めた。日本は米英仏伊と並ぶ輝かしき五大国、すなわち時の「平和愛好国」の一員となった。日本は優等賞をもらって卒業したのである。

随分な言い方である!!しかし日本が「坂の上の雲」を掴もうと、必死になって近代化を推し進めてきたことは事実であるし、格下の朝鮮半島に対して、欧米から習った国際法を押し付け、不平等条約を結ばせたことも事実である。

アメリカの上から目線爆発の言い分なので、少し長いですが引用しておきました!

ですよね

戦後、アメリカは「日本が韓国を奴隷にした」と非難したが、そのような事実はない。(韓国併合を含む)日本の韓国における行動はすべて、イギリスの同盟国として「合法的に」行われたことだ。国際関係の原則に則り、当時の最善の行動基準に従って行われたことである。

しかもその原則は、日本が作ったものではない。欧米列強、主にイギリスが作った原則なのだ。日本は欧米列強から教わった国際関係の規則を、実に細かいところまで几帳面に守っていたのだ。

これが国際社会の常識である。韓国政府は「日本による韓国併合は不法だった」と主張しているが、これは笑止千万もの。

徴用工問題にしても、自衛隊機へのレーダー照射問題にしても、隣国たる韓国の振る舞いは友好国のそれではない。常に戦前の日本による「仕打ち」を持ち出すが、弱肉強食の国際社会において何もできなかった自らを省みる様子は一切ない。

2000年にわたり中国の属国として生き延びてきた国だけに、統治能力や国際社会での立ち居振る舞いは未熟である(日本も欧米にお褒めいただいているようでは、まだまだということではあるが・・・)。

朝鮮半島という視点で見れば、お騒がせのならず者国家も存在する。先のミアーズの表現を借りるなら、まだ幼稚園すら出ていない段階であろう。

韓国をまともに相手にすると疲弊ばかり。地政学的には今のまま南北に分裂させておくことが日本の国益に適うので、統一さえ阻止できれば、「戦略的無視」という扱いでいいのでは。

人種差別という視点

日本の政策担当者は、日本民族は白色民族に差別されていると本気で信じていたようだ。また、競争力の強い欧米列強は、やろうと思えば、日本との通商を断絶し、日本の首を絞めることができる。問題の基本にあるのは、資源の欠如ではなく、民族間の信頼の欠如だった。

日本は、自由主義と主権尊重といった表向きの政策は飾りに過ぎないと思った。それが日本を不安にさせ、自分たちには確実性と安全性がないと思わせたのだった。

私たち日本人が習う近現代の歴史や日本政府の意思決定においては、「人種差別」という側面はあまり強調されない。ただ、当時の日本人は、有色人種が不当に差別されていることに憤りを感じ、白人に対抗するという観点で「大東亜共栄圏」とか「八紘一宇」といったスローガンを掲げていたことは事実である。

なぜ、戦後の教育ではこの点が強調されないか。理由はおそらくこんなところだろう。

・GHQは太平洋戦争を「白人vs有色人種」ではなく「日本の世界侵略を正しい勢力が阻んだ」という位置付けにしたかった(事実、GHQは大東亜戦争という名称を認めず、太平洋戦争と改めさせた)。

・日本自身が朝鮮人や中国人を差別的に扱っており、自家撞着に陥ることになる

欧米列強の欺瞞と差別に立ち向かったのは正しかったのですが、日本の拡大路線が急激すぎて、力でねじ伏せられてしまったわけですね。残念ですが、歴史的事実です。

その他のアメリカ人視点

欧米列強の中で、日本が韓国を属国化した政策に反対していたのはロシアだけである。そのロシアも日本の行為が許せなかったのではなく、単に自分がその地位を占めたかったに過ぎない。当時の英米にとっては、ロシアが韓国にいるより、日本にいてもらったほうが良かったのだ。

日本の仕事は、潜在的混乱地域である韓国で「法と秩序」を維持し、ロシアが同地で必要以上に勢力を拡大しないように牽制することであった。

日本が欧米列強の「仲間入り」できたのは、大英帝国とロシアの伝統的対立の中で、ロシアを抑えるという「役割」があったからだ。クリミア戦争で英仏に敗れたロシアは、地中海ルートに代わり、北東アジアルートで太平洋にアクセスしようとしていたのである。

日本は不平等条約による最恵国待遇にしばられていたため、ある国に与えられる特権はほかの国にも与えられることになり、特定の一国と特別な条約を結ぶことができなかった。よってイギリスは日本の「独立」を急がせたのである。なお、市場も「役割」もない韓国は、欧米列強にとって直接的な意味を持っていなかった。

西洋人は伝統的に「後進民族に西洋文明の恩恵をもたらす」こと、すなわち、近代科学、医学、公衆衛生、倫理原則を教え、教育制度を改善し、政治的、経済的に自由な社会に導くことだけを考えて行動してきた、という思い込みがある。

しかし、西洋は民主主義国でさえ、後進地域に民主主義をもたらしはしなかった。代わりに彼らは人種差別を行い、地域の経済開発を自分たちの利益のために握り、軍隊に擁護されたアメとムチ政策で、現地政府を操作していた。

(明治維新以降)日本の指導者たちは、欧米列強の行動に合わせながら、経験を積んでいった。彼らは帝国を建設してきた欧米列強の歴史を研究し、西洋の原則というものは、国際法だの人道主義だのは建前であり、現実には強い国々が弱い国を犠牲にして、自分たちの利益の増大を図るための術数に過ぎないことを理解した。

領土の併合や力による経済的優位の獲得も、超大国が作り出したルールに従って「合法的にやりさえすれば」正当な行為と見なされる。弱小国が強大国と平等の関係を望むなら、強大国のために貢献して新たな地位を得るか、要求を出せるだけの力を持つことだ。法と秩序、人道主義、機会均等、人種間の公平なるものは、国際法のルール同様、「法的擬制」に過ぎない。そういったことを日本は理解したのである。

日本が抱えていたのは、過剰な人口、日本人移民を受け入れない世界の障壁、対外貿易への過度の依存、国民に雇用と食料を保障するための物資購入とそのために必要な輸出の拡大、という生死にかかわる問題だった。

その中で、日本人は人種的に差別されているという確信が、ついには感情的迫力を帯びるに至った。

アメリカのモンロー主義は、ヨーロッパの支配が西半球まで及ぶことに反対するものだった。そして大東亜共栄圏は、欧米の支配がアジアに及ぶことに反対するものだった。日本はこれを日本が主張できる当然の権利だと思っていた。

もしアジアの政治活動家が(英米中3国が対日戦の基本方針を定めた)カイロ宣言を解釈するなら、日本の罪状は、日本が植民地住民に対して暴虐を振るったことではなく、同じような暴虐で欧米列強が確立した植民地体制の現状(status quo)を揺さぶったことなのだ。

日本は大東亜戦争を「白人支配からアジアを解放する」という”プロパガンダ”で戦った。開戦当初、日本が破竹の勢いで香港・シンガポールを奪い、インド付近まで勢力圏を広げられたのは、大東亜共栄圏の建設という革命的魅力に負うところが大きい。

日本は満州および中国での軍事行動について「共産主義の脅威を抑え、混乱状態に秩序をもたらし、国家の存立を保全し、極東の平和と秩序を促進するためである」と言っていた。これはアメリカが朝鮮占領と対中国政策を説明するときの論理と全く同じである。

ヘレン・ミアーズ
(角川ソフィア文庫)

※日本史では決して学べないアメリカの戦略眼。学びの多い一冊